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かっこ21

二次創作の妄想ブログ。あらゆる物に関係なぞあるわけない。

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「屋上にて」の続きです。
死を匂わせる、というかダイレクトに「死ぬ」ことについて書いていますので、苦手な方はまわれ右してください。

以前と同じ設定です。
閻魔→卒業延期しちゃってる3年生。
鬼男→2年生。
「もう、長くないらしい」
人づてに聞いたその事実は、深く胸に突き刺さった。
病に倒れ数か月。
もともと長生きしそうにない顔色をしていた。
病気になったと聞いた時も、やっぱり、と思ったほどだった。
痩せた体は骨や血管が浮き出て、すぐにでも風化しそう。
青白い顔には、紫の唇がうっすらくっ付いている。
不気味だと、誰もが思う姿。
今、どうやって生きているのだろう。
そう感じる人物だった。
だから病気しても、余命幾許もなくても、変に納得が出来るのだった。


その人が病に倒れたのは、自殺未遂した翌月のことだった。
自殺未遂をする直前まで「死にたい」と呟いていた。
何かが吹っ切れたのか、ある日、いつものように「死にたい」と言いながら泣き出し、終いには屋上から身を投げ出そうとした。
決死の思いで、いや、よく覚えていないが、彼を助け怒鳴りつけたのは、まだ記憶に新しい。
あの時、彼を見下ろして、確かに僕は
「そろそろ、死ぬんだな」
と感じていた。
感じるだけじゃなく、確証まで得ていた気がする。
未遂事件後、休みがちになり、次第に彼は登校しなくなった。
様子を見に行けば「具合が悪い」などと言い、顔を見せてはくれなかった。
そして、その後、人伝に入院したのだと聞いた。
入退院を繰り返し、そして、彼はもう、自宅療養という名の余命を過ごす期間へと移っていた。
僕は会えるとは思わないながらも、居てもたってもいられず、彼の家へと向かった。

家には、疲れ果てた顔の母親らしき女性がひっそりと居た。
二コリとも笑わず、僕を彼の部屋へ通す。
彼は、以前よりも痩せこけて、そして、もう息をしてないんじゃないかと思うほど、動かなかった。
「・・・・こんにちは」
僕は声を絞り出した。
彼を目の前にして、何を言えばいいのか、すっかり分からなくなったのだ。
キョロリと色の薄い目玉が僕へと向いた。
生気など、そこにはもうない。
「・・や・・来たの・・」
声だけはクリアだった。
小さい声ではあるが、掠れてもいなければ空気が漏れているようなヒューヒューという音もしなかった。
「具合、どうですか?」
聞くまでもない。悪いに決まってる。
「見たままだよ」
「・・」
もう、なんて声をかけていいのか分からない。
また叱りつけてやろうなんて考えられない。
それ以前に大きな声を出すとびっくりして、そのまま死んでしまうのではないか、そう思うほど目に見えて死に顔になっていたのだ。
「ねえ・・鬼男くん」
「はい?」
「・・・前」
「ん?」
「屋上。あの時・・・」
薄い唇が小さくカタカタと動き声を出す。
どこか、遠い景色を見ているように僕はその唇を眺めた。
「飛び降りたときですか?」
「ん・・」
目はどこを見ているのか分からない。
焦点は、あっているように見えるが、ヒョロリヒョロリと天井の左右を行き来している。
不気味だ。
気味の悪い顔だ。
怖い。
その感情が次第に僕の中にあふれた。
これが見知らぬ他人だったならば、近寄りたくないと思うほどに。
「あの時、が、どうしたんですか?」
この彼の顔を見ていられないのに、目はそこから離れようとはしなかった。
目を離した隙に、死んでしまうのではないか、という別の恐怖が僕の中にあったからだ。
彼の目玉は左右の動きをゆっくり止め、僕の方へと目を向けた。
「・・・ご、ごめ、ごめん、ね」
声が震えている。
途切れ途切れで聞こえた声は、今にも消えてしまいそうで、聞いているこっちが泣き出したくなるものだった。
謝った後も、何度も何度も僕に「ごめんね」を繰り返した。
「・・な、んで、謝るんですか」
声が出ない。絞り出した声は掠れて、そして息が詰まるほど、音にしづらかった。
泣いてはいない。
だけど、気を緩めると、ボタボタと涙が落ちそうな気がしていた。
彼の目からはポタポタと涙が流れている。
顔は歪ませず、目だけで泣いている。
「だって、ね、謝ること。たくさん、した。でしょ?怒らせたし、驚かせた。屋上に、ひ、ひきあ、引き上げてくれた。助けて。くれた。」
「目の前で、死なれたくないですもん・・」
「そんな、そ、そんなさ、俺のそば、い、居てくれた」
「・・・」
薄い骨の浮いた手がふわりと僕の手を握った。
ひんやり冷たくて、でも、少し暖かい。
生きている。
この人はまだ生きている。
「ごめんね。ありがとう」
詰まらず、クリアに声が聞こえた。
僕は何も言えない。
声も出ないし、何を言えばいいかも分からなければ、言いたいことが多すぎるし。自分がいま、どう感じて、どうしたいか全く分からない。
我慢していた涙は、耐えきれず流れ始めた。
ボタボタと大粒の涙だった。
「ぼ、ぼく、僕は。僕はっ、あなたに、あ、あんたに!い、生きていてほしくてっ、一人にし、したら、死にそうでっ・・だから」
伝えたいことはちゃんと分かっている。
なのに、言葉が出てこない。
自分でも何を一生懸命言っているのか、分からない。
必至に息を吸って、声を出しても、伝わらない。
でも、彼は、分かっているような風に手を強く握り、うん、うん、と相槌を打ってくれた。
「しん、しな、死なないでっ・・」
叫ぶように声を出した。
ひっくり返った甲高い声だった。
はあはあと息が切れる。
言いたい一言を言い切り、僕は涙でぐしゃぐしゃの顔を上げた。
目の前には彼の泣き顔がある。
その泣き顔が小さく、呟いた。


「死にたくないよ・・」


時間が、止まった。
そう感じた。
泣き顔はグッシャリと歪み、嗚咽を漏らした。
「死に、死にたくないっ、今まで、あ、あん、あんなに。死にたくて、死にたくて、死にたくて、死にたくて、たまらなかったのにっ、き、君に、助けられてっ、死が遠ざかって、病気に、なって、死がまた、近くなって、なんで。っんでかな?近づけ、ば、近づくほどっ、死にたくなくなるのっ生きていたくなるのっ、で、でも、ど、どうに、も、ねっ。ならないのっ・・助けてっ・・助けてよ・・」
「・・」
「まだっ、まだ、君、鬼、鬼男くんと、居たいよ・・」
「・・・」
そのあとも、しばらく泣き顔は死にたくないを言い続けた。
言葉とは裏腹な体。
食事も満足に取れず、点滴がぶら下がる金属の棒。
彼が居なくなるのは、もう間もなくだった。





――――――――-----------------------
死が近い人の名前って呼びにくくないですか?
私は呼べませんでした。
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無題

こんばんはですー。


何だろう。読みながらだんだんと胸が締め付けられる感じが最後まで抜けなかったです。

死にたいとか消えたいとか言う気持ちが、本当に死にたいと思っていても、死を目前にすると生きたいと思うその感じには覚えがあるので、この話の中の閻魔の気持ちが(全部なんてそんなえらそうな事はいえないにしても)分かります。
……もう、本当に語彙の貧困さが恨めしいのだけれど。このお話の閻魔は本当に幸せだと思うのです。羨ましいくらいに。

場違いになるのは百も承知なのだけど、こういうのを読ませてくれてありがとうでした。
これを読んでいると、死にたいと言うのがいかに軽いかと言うのを自分の中で改めて思い知らされる気がするんです。
うん。
やっぱりビラさん神だよ……もう私弟子入りするよ……。←
by 黒瀬 綺@ 2009/04/01(Wed)23:31:19 編集

無題

おはよーです(時間差パネェ)

読んでくれてありがとう、こんな訳わからないのに・・・。

今まで、「死にたい」って言ってる人のことってよく分からなくてさ、確かに自分もそう思う時ってあったし、軽口で言う時もあれば、本気の時もあるし、結構難しい単語だと思ってたんです。
だけど、身内が亡くなった時、なんか「死ぬ」ってそんな簡単なことじゃないって感じたんよ。
言うのは簡単だけど、実行するのは結構難しいって。
自殺も実行するまでの勇気やらでなかなかできないし、病気もあっさり死ぬことなんてないから。
両方とも、最期に思うのは「生きたかった」「もっと違う風に生きたかった」ってことだと思うんです。
閻魔は結構重たいもの抱え込んで、死にたくてたまらないって思っていても鬼男くんっていうストッパーがあったから限界まで我慢することが出来たし、最期に「生きたい」という考えを持つことができたんです。
たった一人でも、一緒に居たいと思う人がいるだけで、人間は生きるし、死ぬと思うんです。
だから「死にたい」って結構難しくて、容易に言えないものだなーと思うんです。

こんなグダグダな文章で申し訳ないです。
でも、「死」と「生」が複雑に、そして単純に結びついているのを感じてもらえたら幸いです。

ていうか、綺ちゃん。
こんな文を読むだけで、そんな深いコメントできるなんて、すごい・・!
なに、君、神だったの・・?!
私なんかに弟子入りしちゃらめぇぇぇ!!!
by ビラ 2009/04/02(Thu)07:09:26 編集
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    ただの変態です。ただそれだけです。
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